蜷川幸雄氏、まだまだ大傑作作れる! “55歳以上限定”劇団に応募者1266人

応募者1266人が殺到し、話題になっている蜷川幸雄氏(70)主宰の55歳以上を対象にした「さいたまゴールド・シアター」。定員は約20人で競争率約63倍の狭き門だ。お年寄りの劇団づくりが「長年の夢だった」という蜷川氏は海外公演もこなしながら2、3年先のスケジュールまで埋まっている日本一忙しい演出家。疾走し続ける70歳の多忙人を新たな劇団に駆り立てるものは何なのか、直撃した。

 ―大変な人気です。
 「いやあ、驚きだね。予想は200~300人。はるかに超えた。応募書類を読むと、まじめでひたむき。こんなにも表現することに飢える人がいるんだ、と思ったよ」

 ―当初の選考方法を変更すると聞きました。希望者は蜷川さんに何を求めているのでしょう。
 「灰皿投げられたいお年寄りもいたりしてな(笑い)。書類審査をやめることにしたんだ。この人たちを書類でハネるなんてことできないよ。全員会います」

 ―かつてご自身は60代引退説を唱えるなど老いを醜悪ととらえていた印象も。新劇団とは意外です。
 「おれが一番嫌いなのは老いた権力者。偉そうに君臨しているのが我慢ならない。そうなりたくないと絶えず自分をチェックしてきた。今回の劇団は夢だったの」

 ―どうしてですか。
 「高齢者の経験、生活の歴史が新しい違った演出の様相をなすのではないか。自分も刺激を受けてもっと過激にいきたい。今こそ、その時。大変なのはお年寄りの頑迷さにどう挑むのかだろうね」

 ―面接では何を重視しますか。
 「デリケートな人も多いだろうね。表現力や協調性も大事だけどノイズを持った人も大事にしたい。性格も見定めないと。やる限りプロの専門家集団にする。でも、おれみたいな人が20人集まったりしたら最悪だよな(苦笑)」

 ―忙しくて目が回りませんか。常に元気。何か特製サプリメントでものんでいるのですか。
 「全然! 生き延びるための策は何もしてないよ」

 ―「老い」とは何だと考えますか。
 「衰弱をきちんと意識できること。何が出来て、出来なくなったか。メランコリックな精神だけ拡大してないか。世界を分かった気になっていないか。これらのチェック事項を列挙することができること」

 ―名声や地位も十分ある。余生をゆっくり送りたいと思うことは?
 「やだよ! まだまだ終わってないよ! まだ大傑作を作れると思ってる。もっとひんしゅくを買う仕事やってみたいんだ。老醜と思うからいけないんでね。ボロボロになってプライドなんかかなぐり捨ててその姿を見てもらえばいい」

 ―「ゴールド・シアター」と命名した理由。「蜷川幸雄劇団」でもよかったのでは。
 「それじゃあ欽ちゃん劇団みたいだろ(笑い)。シルバーだとモロだからさ。もっとその上をやっていきたいと思ってるんだよね」

 ◆蜷川 幸雄(にながわ・ゆきお)1935年10月15日、埼玉・川口市生まれ。70歳。俳優をへて1969年「真情あふるる軽薄さ」で演出家デビュー。以後「ロミオとジュリエット」「NINAGAWAマクベス」「王女メディア」「近松心中物語」「夏の夜の夢」「身毒丸」「ハムレット」「リア王」「オイディプス王」など国内外で活躍。「青の炎」「嗤う伊右衛門」では映画監督も。桐朋学園大短大部学長も務め、2004年には文化功労者に。長女は写真家で映画監督の蜷川実花。めいの蜷川有紀は女優。

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